ここではパーソナルブランディングの作りの最初の一歩について、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。そもそもパーソナルブランドとはなんでしょうか?人によって解釈が多少ぶれますが、 「他の人との差別化によって、より有利なビジネス状況を生み出すこと」とここでは定めたいと思います。
もう少し関係する言葉の定義について話してみたいと思います。ブランドの定義は「ブランドとは、ある販売者の商品またはサービスを他の販売者のものと区別して識別するための名称、用語、デザイン、シンボル、またはその他の特徴のこと」です(American Marketing Association)。パーソナルブランドは、「個人の他の個人や団体と区別して識別するための名称、用語、デザイン、シンボル、またはその他の特徴のこと」と定義できますね。
ブランディングとはなんでしょうか?こちらよく混同されがちですが、こちらは「ブランディングとは、製品やサービスにブランドの力を付与することである」(Kotler & Keller, 2015)とされています。具体的には、ブランディンはブランドを作るアクションを意味しています。パーソナルブランディングは、こちらも個人におけるアクション、例えばLinkedInでポストをするは具体的なアクション例になりますね。
目次
- パーソナルブランディングとの出会い
- ポイントは継続性
- パーソナルブランディングの緊急度により、やり方を変える必要がある
- アイデンティティの重要性に気づく
- まとめ
- 参照
1. パーソナルブランディングとの出会い
その後、パーソナルブランディングを研究していくと、社会人最初の仕事、総合商社時代の先輩の言葉と深く結びついていることに気がつきました。入社当時配属された部署、産業機械課の田嶋先輩は「会社の看板で商売しているようじゃ、甘い。個人商店として早くお客様の信頼を勝ち得ることだ!」と機会あるごとにハッパをかけてもらいました。これはまさにパーソナルブランディングのコアにつながる部分です。カタカナのパーソナルブランディングという洒落た言葉以前に、仕事の現場でこのコアになる部分の訓練を受けてきました。
個人商店という響きは、実家が自営業だったせいか、ピンときました。総合商社時代のお客様(これは仕入れ元と売り先を意味します)も、この個人商店という考え方を、「私たちのようなメーカーではなかなか難しい考え方だが、お付き合いのある商社の優秀な方は、個人商店が多く、個性がある。そして頼りになる。君も頑張れ!」と教えて頂きました。昭和の世界の一部ですね。
このポストでは、総合商社時代で学び、現在ではMBAで教壇に立って教えているパーソナルブランディンについての、実際に役に立つヒントの一部を公開したいと思います。私は、スペインの複数のビジネススクールで教壇に立っています。30歳未満の生徒を中心に、就活につながるLinkedInやパーソナルブランディングについて教えています。また現地企業向けの研修でも、ビジネスにつながるLinkedInやビジネスフレームワークを利用したブランディングについて教えています。
2. 最初のポイントは継続性
パーソナルブランディングでの典型的な失敗原因は継続性にあります。ブランド力と投資(時間/お金)は直接的な関係ですので、理想的にはこのように投資しただけブランド力が上がります。このような関係図が明確であれば、投資効果が予想できますので、ブランド投資にかける理由が明白で、努力が報われ結果が出るのが読めます。ところが実際は、このようになりません。
実際は、ブランドが市場で認知されれるには多くの投資と時間が必要になってきます。特に時間軸は大事で、身の回りで知られているブランドの多くは、昔から存在するもの多いのが分かると思います。これを図説すると、このようになります。
LinkedInのパーソナルブランディングでよく知られている、Cèlia Hilさんは彼女が開催するLinkedIn講習会では全てのノウハウを教えています。2018年、Covidによる外出禁止になる前の講習会で、参加者が「それだけのノウハウを教えたら、Cèlia Hilさんのビジネスは参加者によっていつか取られてしまうのではないですか?」との質問をされました。彼女は「ご心配ありがとう。全然心配していません。なぜなら、参加した99%の皆さんは1年後にはお教えした事を続けていません。少なくとも3年は続けないといけないプロジェクトです。」と、さらり回答してしていました。
彼女の回答から多くのことが読み取れます。パーソナルブランディングをやり切る人は少ないこと。とっかかりは複数の方法があり、始めるのは簡単だが、継続性が究極的な成功要因であることです。
3. 2つ目はパーソナルブランディングの緊急度により、やり方を変える必要がある
これは忘れがちな考え方で、下の時間管理のマトリックスに示したように、パーソナルブランディングは重要度が高いと決めた場合、緊急度によりやり方が異なります。一般的にはすぐに結果を出したいですよね。となるとそれなりのやり方が必要になります。
ここではパーソナルブランディングですので、個人が対象ですね。緊急度が高い場合は、露出を確保する必要がありますので、広告投入が必要となります。直接広告投入が不可の場合は、他のアイディアが必要です。直接出費を伴わない場合のコラボは良い例ですね。
しかし「広告を打つ」作戦には落とし穴があります。Kanter社(世界的にメジャーな調査会社)では2006年と2015年のデーターを当時Kantar Millward Brown社に在籍していたDan White氏とPeter Walsher氏がBrand Value Growth Matrix (ブランド価値成長マトリクス) を作成しました。ここではブランドを作る上での広告価値を分析しています。調査内容は広告のブランドに与える影響力です。その結果は、やはり広告をした方がいいとなりました。この結果は想定範囲内ですが、広告効果が条件により、28%と121%と大きく差がつくことがわかりました。その理由は「明確に定義されたアイデンティ」の有無に関係しています。「明確に定義されたアイデンティ」がある方が、広告効果が非常に高いのです。これは非常に大きなヒントになります。そして注意しなくていけないのは、ここではブランド広告について述べていて、特定の商品やサービスの広告ではないということです。
4. 3つ目はアイデンティティの重要性に気づく
パーソナルブランディングはサービスや商品の広告と異なり、ブランド構築なんですね。すなわち、信用力を作ることなんですね。となると、やはりキーとなるのは売り物ではなくて、アイデンティティの設定となります。そしてアイデンティティの設定と保守はとても大変な作業です。欧米ですとブランドマネージャーという職種があります。彼らのミッションはブランドのアイデンティティを守りつつ、発展させる事なんですね。このブランド構築のためのプロセスは複雑であり、時間と費用がかかります。特に最初の設定には多くの苦労が伴うのが通常です。
パーソナルブランディングの場合には、こちらの「ライフデザインのための3要素」でアイデンティティを考えてみると良いでしょう。低予算であっても、プロセスを知らなくても、この3要素を考えることはとても大事なことです。
好きな事と得意な事は、似ているようで実は異なっています。好きな事は自分中心で考えると良いでしょう。その一方得意な事は第3者から見て評価されることが必要です。得意だと思っていたが、実は評価が低い項目より、評価が高い項目を優先してみてください。またこの3要素で大事な項目が社会貢献です。この項目があると、よりインパクトのあるアイデンティティーが作りやすくなります。
そして一人で考えずに、友人の助けを借りることです。決め打ちではなくて、変更を前提にして、どんどん改善していけば良いのです。検討をしていけば、きっと新しいアイディアが浮かんできます。
社会貢献の例:私は #karateforseniors というプロジェクトを運営しています。これは空手を通じてより良い社会を作っていくプロジェクトです。願いは、子供達が携帯ではなく、自らの体を動かして、交流を図り、より健全なコミュニティーを作っていこう。そのためには、空手シニアー達の活躍が必要であるとのメッセージをインスタグラムを通じて発信しています。ぜひ繋がって活動の応援をお願いします。
https://www.instagram.com/karateforseniors/
5. まとめ
パーソナルブランディングは生涯プロジェクトとしても大変面白いものです。MBAのマーケティングクラスを実際に個人のレベルに落として試してみるような感覚でしょうか。ブランド構築には営業とは異なる考え方が必要です。特に時間軸には留意されるべきです。
パーソナルブランディングへ興味を持たれる多くの理由は、「有名人になりたい」ではなく「不安定な経済状況から、安定した収入とより豊かな生活を望む」です。社会人であれば、社内外から認められることによる、昇進や在勤確保できますね。また転職もより自由となるでしょう。自営業であれば、お客さんから指名で受注があるようなイメージですね。自営業の方は、営業に割かれる時間が少ない方が、より質の高い納品ができますから、これは大事な要素です。そしてお客さんを選択する自由が手に入るとしたら、これほど嬉しいことはありません。
ここで申し上げた3点に留意され、最初の一歩を踏み出すことにより、次の具体策がより明確に見えてくるはずです。人によっては最初のプロセスをじっくりというタイプもいらっしゃいますし、走りながら考えるというタイプの方もいらっしゃいます。一つだけ共通しているのは、どちらのケースも修正を加えながら、前進することが必要だという事です。最初から決め打ちすることはお勧めしません。そして繰り返しとなりますが、最も大事なのは継続性です。
皆様のご幸運をお祈りしております。また、一緒にパーソナルブランディングを作ってみたいと思われましたら、是非お問い合わせ下さい。継続性の担保には第3者のアドバイスが非常に有効であること、証明済です。
6. 参照
- American Marketing Association AMA https://www.ama.org/
- Dan White, The smart branding book, 2023
- Kotler & Kelle, Marketing Management, 2015
- Marion Andrivet, What is the branding, The Branding Journal, 2022
- スティーブン R コヴィー, 7つの習慣,2020, キングベアー社
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